桃紅李白菜華黄 門著春風総不知
桃は紅、李は白く、菜華は黄、
春風に門著すれども、総て知らず
見渡せば、
山辺は紅の桃の花が、
里辺には白い李の花が、
田畑には黄色い菜の花が咲き競い、
それぞれが千差万別の姿で春を謳歌している。
いったい誰が、
このような色どり美しい花を染めたのかと春風に問うも、
春風は全く知らぬという。
花は美しく咲いて 人々からほめられようという心もなく、
春風には 花を咲かせてやろう という作意もない。
花無心、春風また無心。
ただ咲き、ただ吹く。
それもそのはず、紅、白、黄と各々、
それはそれぞれに異なっているが、
異なっていること自体が、
「本具仏性」（本来衆生に具わる本性）の絶対のすがたなのだから。
桃は桃であり、李は李であり、菜の花は菜の花である。
各々が「本来の自己」（仏性）を顕現し今に生きる。
即ち、それぞれが真の自分自身を見失わず、
自分の花を咲かせている。
私たちが花を見て美しいと思うのは、
その花が 美しく見せようと咲いているのではなく、
自然のままに咲いているからである。
また、咲こうとする その一所懸命さを
私たちは美しいと感じるのである。
春の弥生はうららかに
桃や李の花ざかり
（大愚良寛禅師）
平成31年 3月 1日
自然宗佛國寺 開山 愚谷軒 黙雷
自然宗佛國寺：開山 黙雷和尚が、
行脚（徒歩）55年・下座行（路上坐禅）50年の修行からお伝えしています。
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